ひとつのベッド

ベッドの中で一通り睦み合いを交わして、精を吐き出して、それでもまだ物足りなげにキスを交わす。
ふとアンジールの瞼が重くなったように下がっていくのを見て尋ねる。
「眠くなったか?」
「ああ……」
返事ももはや力無い。今日の明け方近くまで任務があったのだ。流石に限界らしい。
此所はジェネシスの部屋だったのだが、アンジールは恐らく自室のベッドまで辿り着けないだろう。
「今日は泊まっていくか?」
ジェネシスが問うと、アンジールは小さく頷いて「一緒に寝よう」と言ってくれた。
もうその時点でアンジールは殆ど夢うつつの状態だったのだが、ジェネシスはどうしても寝る前に軽くシャワーを浴びたくて一旦ベッドから抜け出す。
ぬるめのシャワーをさっと浴びて、簡単に身体を拭くと直ぐにベッドに取って返した。
が、既にアンジールは完全に眠りに落ちてしまっていた。
ジェネシスは仕方がないな……と云う顔をしながらも少し笑んでから。自分もごそごそとベッドに潜り込む。
しかし、そこではたとジェネシスの動きが止まってしまった。
「せ……狭い」
ジェネシスのベッドは少し大きめのダブルベッドで何時もなら二人で一緒に寝るのも苦ではなかったのだが。しかしながら、今回はアンジールが思いっきりど真ん中で眠ってしまっているのだ。
いくら大きめのダブルベッドでも、アンジール程の大男に、こうもど真ん中で眠られると殆ど左右に余裕が無い。
横からアンジールの頬をつんつんと押してみるが全くの無反応で、どうにも起きてくれそうにない。少し身体を押してみるが、この体格の良い身体がそう簡単に動くはずもなく。
何より、疲れて眠っている様子のアンジールを無理矢理起こすのは忍びない。
ついに観念したジェネシスは身を起こして辺りを見回す。反対側の方を見ても、やはりジェネシスが身を置くスペースは無さそうだ。
── 俺にソファか床にでも寝ろと云うのか? 冗談じゃない!
自分がアンジールの部屋に行く事も考えたが、普段はアンジールと一緒にいるから虫が出ても始末してもらっている訳で、一人であの部屋に行くのはやはり御免であった。
思案の末、ジェネシスは再び強引にベッドに潜り込む。
そして思いっきりアンジールに身を寄せた。こうして引っ付いて眠れば、多少狭くても何とかなるだろう、多分。
そう思いながらアンジールの胸元に顔をうずめると、熟睡しているはずのアンジールの左手がふっと動いてジェネシスの頭を撫でた。
驚いて暫しアンジールを観察するが、いびきに近い寝息を立てており、とても起きているようには見えない。
アンジールとジェネシスは幼馴染みで、幼い頃からずっと一緒にいるから、付き合うようになった今でも取り立ててドキドキする事など無かったのだが、夢の中でも自分を想ってくれているのかと思うとジェネシスは不覚にもどきりとした。
アンジールに寄り添うようにぴったりと引っ付いて、時々寝顔を窺いつつ。
慣れないドキドキを抱えたジェネシスは、結局あまり眠れなかった。
アンジールが起きてから、「ど真ん中で寝るな!」と抗議したのは、断じて照れ隠しではない。

end
2010/4/26