-No Way Out-

神羅に属するソルジャーには、完全な休日というものは無い。例え、オフでも招集が掛れば出動しなければならない。命令拒否権が与えられているのは1stだけ。つまり、オフと言っても実際は常に待機状態なのだ。

オフの時でも何時でも招集に応じる事が出来るように、ソルジャーには専用の宿舎が与えられている。宿舎は、1st、2nd、3rdとソルジャーのクラスによってそれぞれ別棟に別れている。
1stのソルジャーは、人数が少ない為、1st用の宿舎はあまり大きな建物ではない。が、造りは一番立派であった。その1st専用の宿舎の最上階、ペントハウスを与えられているのが、神羅の英雄── ソルジャー・クラス1stセフィロスであった。

◇◆◇

ある日、少し早く目覚めてしまったセフィロスは、新鮮な空気を吸いたくてペントハウスの更に上にある屋上に行こうと階段に向かった。宿舎内には、エレベーターも設置されているのだが、屋上に行くには階段を使うしかないのだ。
階段に差し掛かったところで、下の階の声が漏れ聞こえてきた。興味を持ったセフィロスは、そっと階段を降りる。

声から察するにアンジールとジェネシスであろう。二人は、隣室なのだ。何故、わざわざ廊下で話しているのかと訝しんだが、どうやらアンジールはこれから任務で出掛けるので、ジェネシスが見送りに出てきたようだった。

「……ちゃんと三食メシを食って、本を読みながら食べれるからって支給の固形食ばっかりじゃ駄目だ! 夜更かしも程々にな、睡眠もしっかり摂って……」
「分かった、分かった」
「出来れば、自炊した方が……」
「しつこいぞ、アンジール!」
「お前は、すぐ布団をはだける癖があるから、風邪に気を付けて……」
「俺は、子供じゃない!」

まるで、どちらが見送られているのか分からなくて、セフィロスは声を殺して笑った。

ふと、二人の会話が途切れたかと思うと、アンジールは誰もいない事を確認するかの様にきょろきょろと辺りを見回し、ジェネシスの頬に軽く唇を触れさせた。
「じゃあ、行ってくる」
「ああ」
軽く手を振り幼馴染みを見送るジェネシスは、セフィロスが見たことのないような柔らかい笑顔を湛えていた。

あの二人は、そういう関係だったのかと悟った瞬間、セフィロスの身体を妙に苛ついた感情が走った。
そして、気が付くと、部屋の中に戻り掛けていたジェネシスの腕を掴んでいた。
急に何者かに腕を掴まれて動揺するジェネシス。
「なっ……!」
一拍置いて、ようやくセフィロスだと認める。と同時に、もしかして、先程のアンジールとの遣り取りを見られただろうかと、不安に襲われた。
「何をするんだ!? ……離せ!」
振り解こうにもセフィロスの利き腕に捉えられた腕はびくりともしない。それどころか、もう片方の腕も捉えられひとつに纏めて、自身の背中に回され拘束される。
「セフィ……んっ!」
セフィロスは空いた右腕をジェネシスの頬に添えると、楽々と唇を奪った。ジェネシスの伏せた睫毛が微かに震える。む様な口付けに応じるかのように動くジェネシスの唇。
「何の……つもりだ?」
ようやく離された濡れた唇で詰問する。
「嫌がっているようには、見えなかったが?」
「……っ!」
ジェネシスは唇を噛み目を逸らすと、吐き棄てた。
「とにかく、離せっ!!」
拘束を解いて、わざとらしく両腕を上げて見せると、ジェネシスは一旦セフィロスを睨み付けてから、自室に入り乱暴にドアを閉めた。
自分でも、何がしたかったのか分からない。ただ、胸の奥底から沸き上がる苛立ちを抑え切れなかった。

自分のモノだと思っていた赤いカナリヤが、そうではなかったと知ってしまったから──

end
2008/2/27