-刻印- 《SG》
傷付けたい訳じゃない。
だが、お前が俺のものであるという、確かな証が欲しい。
ベッドの中で縺れ合う二人の影。
昨夜はアンジールと過ごした褥を、今はセフィロスと共にしている。
セフィロスは緊張で身を縮こませるジェネシスの着衣を躊躇いなく全て奪い取ると、更に全身を万遍なくまさぐり、あちらこちらにキスを落とす。
その度に、身を固くして両腕で自分の身をかばおうとするジェネシスに、セフィロスはトーンを抑えた声で訊いた。
「まさか、初めて……なのか?」
「あ……当たり前だ!」
「だが、お前にはアンジールが── 」
「アンジールとは、恋人、だった訳じゃない」
ジェネシスの告白にセフィロスは驚いて瞠目する。
「確かに……ただの友情じゃなかったさ。だが、それ以上でもなかった。── アイツは結局、キス以上の事を俺にしようとは、しなかったんだ」
ジェネシスは少し身を引いて後退ると、シーツで身を隠す。
「俺が怖いか? ジェネシス?」
その碧玉の瞳でセフィロスを見据え、暫し逡巡したのち僅かに首を左右に振る。
「なら、逃げるな」
セフィロスは、迷いのない真っ直ぐな目線を向けると、力強く利腕を差し延べた。
「お前がどれだけ足掻こうと、お前がどれだけ坑おうと、俺はお前を── 奪う!」
吸い込まれるように、セフィロスの手を取ったジェネシスを、セフィロスは乱暴に引き寄せ組み敷いた。
自分の体内を行き来する自分のものではない熱に、ジェネシスはうなされたように身悶えする。まさか、アンジール以外の誰かに身を任す事になるとは、この間まで考えもしなかった。
充分に解ぐされたとは言え、やはり苦痛を伴う行為に時折眉をひそめる。
「セフィ……ロス」
求めるように請うように切なげに名を呼ぶ、その唇に口付けを与えてやる。
顎を捉えて身じろぎを制限してから、白い首筋に舌を這わせる。残りの手を脇腹に滑らせ、そのしなやかな指で腹筋をなぞってやるとジェネシスはびくりと身を撓らせた。
頚動脈から徐々に下降していくセフィロスの口唇は、やがてジェネシスの鎖骨に辿り着き、そしてそのままそこに喰らい付く。
「── っ!!」
ジェネシスは、苦悶の表情を浮かべながらも辛うじて悲鳴を飲み込んだ。
噛み痕に血が滲む。
こんな些細な疵など、ソルジャーの身体では幾日も経たずに消えるだろう。それでも、付けずにはいられなかった。今、この時、この身体を支配しているのが自分であるという痕跡を残したかった。今、この時、この朱い金糸雀を、征服せしめているのが自分であるという証を刻みつけたかった。
捉えて、閉じ込めて、所有したい── 。
欲望と言う名の檻に、俺はついにジェネシスを拘禁したのだ。
裡に精を吐き出して、ジェネシスを内部からも侵蝕すると、セフィロスは満足気な笑みを浮かべた。
眸を閉じて睫毛を震わせ乱れた吐息を洩らすジェネシスは、自分が虜囚にされたなどとは思ってもいない。
ただ、もう後戻りは出来ない。
セフィロスに付けられた胸元の疵からじんわりと全身にゆるい痛みが広がっていく。
ジェネシスの目端から一条の涙が顔の横を通り耳元へと伝い落ちる。
最終的にセフィロスを選んだと言っても、勿論アンジールを嫌いになった訳ではない。
大事な幼馴染みで、親友で、恋人とは言えずとも確実に友情以上の何かがあった。
セフィロスの腕の中に抱かれながら、ジェネシスは恐怖にその身を震わせる。
セフィロスを受け入れてしまった今、ジェネシスはアンジールとの完全なる別離を覚悟しなければならなかった。
「痛く── したか?」
腕の中で震えて涙を流すジェネシスに気が付いて、声を掛ける。
「悪かった……」
言いながら、セフィロスは自分で付けた傷痕の周囲を指で辿る。
ジェネシスは、ゆるく首を振って。その反動で目許に溜まっていた水滴が振り落とされる。
「いいんだ、セフィロス」
これは、俺に対する罰。
俺が受け入れるべき痛み。
俺の── 罪の証。
ジェネシスは、ゆっくりセフィロスの首筋に手を伸ばすと、引き寄せてキスを強請った。甘く淫蕩に絡められる舌と舌。
たった一度で中毒に陥るヘロイン。
この口付けで、夢中にさせて貶めて忘れさせて欲しい。
そうして、最上の愉悦と陶酔を── 。
end
2008/12/16