バノーラホワイトの悪夢
ジェネシスのところには実家から定期的にバカリンゴが送られてくる。
そんなに多い量ではないから、普段なら大概全部一人で消化してしまうのだが、今回送られて来た量はちょっと一人では食べられそうにない。『アンジールやお友達と食べてね』などとメッセージが付いているあたり、わざと多目に送って来たのだろう。
しかし、困った事に今アンジールは任務の為に不在なのだ。
アンジール以外の『お友達』……セフィロスしか思い浮かばない。だが、セフィロスがリンゴなんか食べるのだろうか?親友のそんな姿が思い浮かばなくて、ジェネシスは苦笑した。
だが、ジェネシスにはバノーラ村を出る前からセフィロスに自分が作ったバカリンゴを食べさせたい、という野望(?)があった。その手始めとして自分が作ったものを食べさせる前に先ず実家のバカリンゴを食べさせてみる── というのは、なかなか良いアイディアに思えた。
── その日の夜、早速セフィロスの居室を訪ねてみる。
ドアの前に立ち、ノックを二度ほどすると「入れ」という声が聞こえたのでドアを開ける。どうやら、セフィロスには訪れたのがジェネシスだと分かっていたらしい。こんな時間に英雄の部屋を訪れる者はジェネシスとアンジールくらいしかいない。そして今、アンジールは任務で不在だ。簡単な推理だった。
ジェネシスが、ちょっと部屋の中を覘くと、既にセフィロスはベッドで寛いでいるようだった。
「もう、寝るところだったか?」
「いや、本でも読もうかと思っていた」
セフィロスは言いながら、サイドテーブルの上に乗った本をこんこんと小突く。と、直後に中に入って来いとでも言うようにジェネシスに手招きしてくる。
ジェネシスは、バカリンゴが見えないように懐に隠しながらセフィロスに近付くと、徐に本題を切り出した。
「その……お前に食べて欲しくて……」
やはり、実家の物とは言えセフィロスにバカリンゴを勧める、というのは何だか気恥ずかしい。ジェネシスの美しい白磁の肌が僅かに朱に染まる。無意識に頬を染めるジェネシスを見てセフィロスが勘違いするのは必然だったのか、或いはセフィロスの願望も手伝ったのか。
「何だ、そんな事か。遠慮するな。こっちへ来い」
力強い返事と共に差し出される手に、ジェネシスは吸い寄せられるように、ベッドの上の英雄に近付きそのままベッドの縁に腰を掛けた。正直、思いの他あっさりバカリンゴを食べてもらえそうでジェネシスは半ば浮かれていたのだ。
ベッドに腰掛けてから、ようやくおずおずとバカリンゴを懐から取り出して……といったところで、セフィロスの方も手を差し出して来たので、それに応える様にジェネシスもバカリンゴを差し出す。── が、セフィロスのしなやかな指が捉えたのはリンゴではなく、ジェネシスの顎だった。
「── !?」
次の瞬間、ジェネシスの唇はセフィロスのそれに塞がれ、ジェネシスの手元からはバカリンゴがコロコロと転がり落ちた。
「な、何をする!?」
「何って、誘ったのはお前の方だろう?」
「誘っ……?」
ジェネシスがあまりの飛躍に付いて行けず目を白黒させていると、そんな事などお構い無しと言った感じで優雅にセフィロスの手が伸びてきてジェネシスの腕を掴む。と、あっさりベッドの上に引き倒した。
「俺に食べて欲しいんだろう?」
馬乗りの体勢で組み敷かれて、ジェネシスはようやく自分の身体が危機に瀕している事に気付く。
「ちょっと待て、セフィロス! 俺が食べて欲しいのは……」
言い終わらない内に再び唇を塞がれる。先刻よりも深い、味わうようなキス。セフィロスの舌の動きに翻弄され、思わず声が洩れる。
「ん……ふ……」
ジェネシスは無意識に英雄の背中に両腕を廻していた。
「セフィロス、止め……」
身体の力は抜け、抵抗の言葉も既に意味を持たない。セフィロスの侵蝕は口内だけに止まらず、頬に顎に首筋にと続いていく。
「はぁ……セフィ、ロス」
更に服を剥かれ、下半身に迄セフィロスの魔手が伸びてきた頃には、ジェネシスは完全に脱力してされるがままだった。
結局、ジェネシスはその後、セフィロスに美味しく頂かれてしまった。
バカリンゴを食べさせようと思っただけだったのに、思惑に反してジェネシス自身が食べられてしまったという事は、ジェネシスにとって軽いトラウマとなり、以後セフィロスにバカリンゴを勧める事はなかったという。
end
2008/1/26