Holy Night
聖なるかな。聖なるかな。聖なるかな。
聖なる夜は誰の下にも平等に、静謐に厳粛に舞い降りる。
英雄の下にも、彼を慕う殉教者の下にも。
淡い雪のように柔らかく、冷たい雪のように清らかに。
八番街から引き上げ1st専用宿舎に戻ると、二人はジェネシスの部屋へと雪崩れ込んだ。二人の逢い引きにはセフィロスの部屋を使用する事が常となっていたのだが、セフィロスが半ば強引にジェネシスの部屋へと導き、押し入ったのだ。
ジェネシスの部屋の隣室は幼馴染みでもあるアンジールの部屋だ。
部屋の中に入った二人は、室内に入る時間も惜しいかのように玄関口で絡み合う。寒くて冷え切った身体を、お互いの体温で一刻も早く補い合おうとしているようだ。体温を上げる為に最適なのは人肌だと本能で悟っている。
逃れられないよう退路を断つべく、セフィロスはジェネシスを玄関先の壁に押し付け固定すると、口付けの合間に身体を万遍なくまさぐっていく。
「あ……ふっ、んん」
1st専用とはいえ意外に安普請なソルジャー宿舎。そして、隣室は幼馴染みでもあるアンジール。
ジェネシスは必死に声を押し殺して耐えているようだったが、それでも僅かな嬌声が洩れ出てしまう。
今宵はクリスマス。
恐らく、アンジールの事だ。恋人や家族と過ごす予定の無い後輩ソルジャー達を引き連れ、賑やかな街へと繰り出している事だろう。或いは、2ndや3rd専用の宿舎に出向いて自らの腕を振るったクリスマス料理と共に後輩達とアットホームなクリスマスパーティーでも開催しているのか。
どちらにせよ、現在アンジールが在宅である可能性は極めて低い。だが、それでも万が一の事を考え健気に声を押し殺して震えるジェネシスに、早くもセフィロスの理性は飛んでしまいそうだった。
時折洩れる小さな喘ぎが、ますますセフィロスを煽り駆り立てる。
唇を噛み締め必死に耐えるジェネシスに、セフィロスはこの上ない満足感を得た。この嬌声を押し殺そうと、いじらしく耐える姿が見たいばかりに、敢えて密会場所にジェネシスの部屋を選んだのだ。
相変わらずジェネシスを壁に固定したまま、セフィロスは徐々にジェネシスの衣服をはだけさせ、その白い首筋に、適度な筋肉を蓄えるやはり白い胸元に唇を這わせる。
外の冷気により一時的に体温が下がってしまったジェネシスには、セフィロスの口付けひとつひとつが溶けてしまいそうに熱い。
「は……あっ……」
抑え切れない遠慮がちな艶声が洩れ出る度に、ジェネシスの理性という名の防壁を一枚また一枚と、引き剥がす事に成功したかのような達成感に酔い痴れる。
もっともっと理性を奪いたい。
無茶苦茶にして平伏せしめたい。
狭い玄関口では、嫌でも身体を密着せざるを得ない。
逃れるように身体を反転させて、セフィロスに背中を向け壁に縋り付くジェネシス。それが却って逆効果だということに気が付いていないのか、無意識に誘っているのか。早くも理性を奪われ、正常な判断が出来なくなっているのか。
背面を見せる方がより無防備になる。セフィロスは一気に背後を覆うようにジェネシスの身体に密着し、拘束力を深めた。たちまちジェネシスは身動ぎさえままならない状況に追い込まれてしまう。
セフィロスの唇が背後からジェネシスの耳元に寄せられ、セフィロスの手指がジェネシスの腹筋辺りや腰周りをまさぐる。耳元に僅かに掛かる熱い吐息がジェネシスの感覚を過敏に呼び覚ます。
加えてセフィロスの左手がジェネシスのサスペンダーを外し、ベルトのバックルに掛けられ、更なる侵食を暗示する。
「んぅ……ふ……っ」
セフィロスの腕を振り払いたい衝動とより深い官能への誘惑。身体はセフィロスを求めているのに、心が拒絶する。理不尽な葛藤にジェネシスの身体は知らず強張る。
その堅牢に聳える城壁をあっさり突き崩すが如くセフィロスはバックルを外し、ジッパーを下ろし、簡単に内部へと手を差し入れてくる。高まり切ったジェネシスの雄は容易く取り出され、セフィロスの手中へと収められた。
ジェネシスは一瞬びくりと跳ねたものの、セフィロスに囚われ寧ろ安堵の息を吐く。
セフィロスは手中に収めた雄を扱きながらも、更に残りの手でジェネシスの着衣を奪い下半身を曝け出す。いつの間にか、自らの着衣も必要なだけ乱していたようだ。
一刻も待てないかのような性急さで、ジェネシスの後孔にセフィロス自身があてがわれる。
ここでもまた、ジェネシスの心の裡では理不尽な葛藤が沸き起こっているのだが、如何せん既に彼の肉体はセフィロスの支配下に置かれている為、身動ぎ程度の些細な抵抗さえ実行に移すことが出来なかった。
じわじわと内部に入り込んでくるセフィロスに、侵入を許可した訳ではないと抗議したかったが、何らかの音を発しようとしても喘ぎ声が零れるだけだ。仮に、拒否の言葉を音にする事に成功したとしても、全く説得力は無いだろう。
ジェネシスは、ここまでの状態にまで追い詰められて、ようやく白旗を上げ官能を楽しむ方向に感情をシフトさせる。こうなったジェネシスは非常に素直だ。セフィロスを受け入れ易いように自ら体勢を変える。
「ああ! ん……っ」
当然の事ながら、受け入れ易い体勢に変えたが為により深くセフィロスの侵入を許してしまう。それ自体は、自らの意思で行った事だから構わないのだが、不覚にも襲いくる強い刺激にますます嬌声が抑え切れない。思わず自分の右手を口許に当てて、声を遮った。
「んん……っ!」
そんなジェネシスを揶揄うように、セフィロスはジェネシスの雄を決して離さず刺激を与えつつ、裡への律動も怠らない。
何とか壁に縋り付いて体勢を保っていたジェネシスも、今や片手という事もあり苦しくなってくる。このままでは、いずれ立ってはいられなくなるだろう。
それを、見越してか崩れ掛けたジェネシスの身体をセフィロスは愛撫の手を休めて抱きかかえる。そして、ベッドへの移動を提案した。
ジェネシスは何もかも見透かされているようで不快で、且つセフィロスの思惑通りに進められてるようで面白くなかった。が、実際その場に立っているのも困難な状況だった為、不本意ながら彼に従うしかなかった。
壁際よりも寝室の方がまだ隣室に声が届きにくい。油断も隙も大きくなる。相変わらず控え目ではあるが、先程よりは嬌声が洩れる頻度が多くなってきた。
いずれ理性の箍が外れて、完全に抑え切れなくなるのも時間の問題だろう。いや、寧ろそこまでジェネシスを追い詰めたい。貶めたい。一種の強迫観念に似た感情がセフィロスを切迫させる。
ベッドに移動する際に一度解放されたジェネシスの陰茎を再びセフィロスの左手が捉え。そして、容赦なく握り込んだ。
「あっ! っ── セフィ、ロス!」
背後から犯されているジェネシスは、セフィロスに縋る事も出来ずシーツを掻き毟る。苦しそうに身を捩り、セフィロスの支配下から抜け出そうと藻掻いているようだ。当然、容易く逃がしてやる程セフィロスは甘くない。足掻く事さえ許さないかのように、セフィロスは陰茎を握り込んだ手に力を入れる。
「はっ! っう……」
ジェネシスの声に成らない呻きが洩れる。
「や……だ」
背後から後孔を犯されつつ、前方も捉らえられ扱かれる。逃げ場もなく、ジェネシスは身悶えするしか術が無い。遂には過剰な刺激に耐え切れず、白濁を吐き出してしまった。セフィロスの── 英雄の掌を穢してしまった罪悪感に、ジェネシスは絶望さえ覚え、がっくりと俯いた。
落ち込むジェネシスの複雑な感情などセフィロスの理解の範疇ではない。現に、ジェネシスはセフィロスの愛撫に因って吐精したのだ。そして、非情なる英雄は己れの餓えに従い、追撃をやめない。再びジェネシスを追い詰め、吐き出させる。
尚も繰り返される行為。後孔と前方への刺激を継続するセフィロスに、ジェネシスはとうとう根を上げた。
「セフィロス! もう、やめて……くれ」
切なげに絞り出される降伏宣言。
クッと小さな笑いと共に、セフィロスの口端が吊り上がる。
「その言葉が聞きたかった」
返ってくるセフィロスの言葉は飽くまで無慈悲だ。
ジェネシスの耳元に唇を添え、尚も低く囁く。ジェネシスの後ろ髪を掴み、無理矢理上向かせ。
「俺が欲しいと── そう言ったのは、お前だろう?」
「う……くぅ」
最早、ジェネシスから発せられるのは言葉に成らない、喘ぎにすら成らない苦鳴のみであった。
銀の星が欲しいと望んだのはジェネシス自身。セフィロスは容赦なく、ジェネシスの望み通り存分に己れを与えた。押し殺す迄もなく、今や嬌声すら上げる事は出来ない。荒い息遣いだけがしんとした部屋に充ちる。
何度目かの吐精を強要されて、遂にジェネシスは敗北の狼煙をあげた。
「も……許して……くれ」
息も絶え絶えで、辛うじて言語と認識出来る程度の儚くか細い懇願。
「クク……。この聖なる夜に、神ではなく、この俺に許しを請うか?」
「それが……あんたの、望み……なら」
どうにか途切れ途切れに吐き出される掠れた声。
無論、英雄はジェネシスの、ひいては己れの望みを成就させるべく、散々に彼を穿ち、何もかもを奪い取った。
奪う事しか知らない英雄。
その英雄に奪われたい、もっと陥めて深い凌辱を与えて欲しい。そう心の奥底で願っている浅ましき愚者。彼は既に堕天使の烙印を押されているのかも知れない。
果ては理性も矜持も奪われて、抑え切れなくなった瑕疵が露わとなる。僅かながらも黒い羽根が辺りに散らばり、背中に暗黒が蠢く。これこそが、堕天を示す証。
奪うだけ奪った英雄は、満足したのか安心したのか、脱力したのか意外に疲弊していたのか。先程までの激情が嘘のように安らかな寝息を立てている。
この醜い漆黒の片鱗を、セフィロスが目覚める前に、セフィロスに気付かれないように、残さず回収しなければならない。己れを叱咤し、重い身体を無理矢理に動かす。
奪う事しか知らない英雄。
その英雄に溺れ心酔した憐れなる殉教者。
神の赦しを請うべきは、果たしてどちらか── ?
end
2011/1/14