赭い月
今日も世界は残酷で、
明日は光輝いている。
◇◇◇
赭い月が秘密めいた夜を照らす。
トレーニングルームの一件以来、医務室での療養を余儀なくされていた恋人が漸く我が手に帰って来て、白銀のソルジャーはそれ以上は待てずにベッドに押し倒した。
「こっちは病み上がりなんだぞ? 手加減しろ」
「無理な相談だな── 」
端から諦めの表情で訴えるジェネシスの白い喉元を味わうように舌を這わせる。
「── んっ……」
久しぶりの感覚に目を閉じて身を委ねる。酔いしれて、唇を合わせて、身体を合わせて。肌と肌が触れ合うだけで、言い知れぬ快感が襲う。お互い、こんなにも飢えていたのかと呆れる程に。足りなくて、逢えずにいた日々を補うように、逢えずにいた時間を埋め合うように、求めて、与えて、受け入れて。
月の光を受けて赭く浮かび上がる何もかもが、途轍もなく不確かに感じられて。
確かなものが欲しくて、セフィロスの腰に足を絡める。身体の裡で脈打つセフィロス自身を、その僅かな脈動さえ、その僅かな熱さえ、全て感じ取りたかった。
「愛してる……ジェネシス」
囁かれる言葉が苦しくて、そっと涙を流す。
こんな夜を、あと何夜過ごせるのだろうか?
自分は、人間ではない。
モンスター、それも不良品で。
彼の傍にいる資格さえ無い。
それでもなお、彼のもとを離れたくないという我が儘さに、自分でも嫌気が差す。
赭い月が照らす空間は、酷く非現実で。
「── 愛してる、セフィロス」
今夜くらいは素直になろうと思った。
こんな夜は、もう二度と来ない。
二人で迎える朝は、とても穏やかで今だけの幸せを静かに噛み締めた。
end
2008/4/19