ホワイトディ-前編-

ジェネシスは、悩んでいた──

街がバレンタインで浮かれ賑わっていた頃、ジェネシスは完全無視を決め込んでいた。うっかり銀髪の英雄に何か渡したりしたら、そこにつけこまれるのは分かっている。本人には、絶対言ってやる気はないがジェネシスはセフィロスにどうしたって弱いのだ。
── それなのに……
ジェネシスは、机の上に鎮座する赤い革表紙の本を恨めしげに見つめる。

バレンタイン、自分は無視を決め込んでいた。が、セフィロスの方から贈り物を渡されてしまったのだ。即座に、突っ返そうとしたが中身が赤い革の表紙にタイトルが金の箔押し、豪華限定版『LOVELESS』と聞いて返せなかった。子供の時分に販売された物で、ジェネシスがずっと探し続けて未だに手に入れられないでいた物だった。

ジェネシスは、義理堅いところがあるから何か受け取ったら、必ずお返しをくれる……と、ジェネシスの幼馴染みに入れ知恵されて、セフィロスはバレンタインに自分が何か受け取るのは諦めて、逆に渡してやったのだ。
そして、まんまと策略に嵌り、ホワイトディに何を返してやれば良いのかとジェネシスは悩み続けている。
セフィロスから貰った物が物だけに、下手な物は渡せない。セフィロスがどうやって手に入れたかは知らないが、そう簡単に手に入る代物ではない事は、自分が良く解っている。アレに見合うだけの物で、且つ、セフィロスが気に入りそうな物。
── 思い付かない……
ジェネシスは、深い深い溜め息を吐いた。
かれこれ半月以上、寝ても醒めてもあの英雄の事を考え続けている。もしかして、これがあの男の策略なのか?

考えあぐねた末にトレーニングルームで待ち合わせた幼馴染みに相談してみた。セフィロスに入れ知恵したのが件の幼馴染みとは、無論気が付いていない。
「本人に、直接聞いてみればいいじゃないか」
「……本人に聞くっていうのは、何だか変じゃないか?」
「でも、下手な物は渡したくないんだろう?」
「……」
「早く決めとかないと、当日までに間に合わないぞ」
そこへタイミング良くセフィロスが現れた。
「ほらっ、聞いてみろ」
ジェネシスは、気が進まなかったが、やはり自分では良い物が思い付きそうにないし、これ以上この案件で悩まされるのもごめんだ……と思い、意を決してセフィロスに近付いた。
── その……ホワイトディだが……何か、欲しい物はあるのか?」
英雄は、暫し視線を宙に向けて考えると、口を開いた。
「まあ── ひとつだけ、あるな」
「な、何だ、それは!? 言ってみろ」
英雄は、優雅な仕草でジェネシスの頬に手を伸ばし、意味有り気に撫でる。
「お前の身体にリボンを掛けて、『プレゼントは、俺』と……」
セフィロスが言い終わらないうちに、ジェネシスの手元からは火球が放たれ、それをセフィロスが避けるものだから、更なる追撃の火球が次々と放たれた。
「ジェネシス、魔法は止めろ! ビルを壊す気か!?」
傍観者だった筈のアンジールが慌てて止めに入ったが、トレーニングルームが暫くの間使い物にならなくなったのは言うまでもない。

end
2008/3/3