ホワイトディ-後編-
── 後に残らないモノがいい……
バレンタインにセフィロスから贈られた赤い革表紙の本を見てジェネシスは想う。この本を見る度にセフィロスの事を思い出してしまうから。だから、自分からの贈り物は後に残らないモノがいい。
あいつの目にも、耳にも、鼻にも、舌にも。
記憶にも、心にも、残らないモノを……。
◇◆◇
部屋のソファで寛ぎながら、ジェネシスは神羅社支給の黒い携帯端末を操る。
ソルジャーには様々なメールが届く。仕事に関係の有るもの、無いもの。社内報やラザード統括からのもの、友人や知人からのもの、そしてファンクラブの会報。
フォルダを開きセフィロスプレミアムFCの会報を黙々とチェックする。勿論、自分がセフィロスのFC会員である事は死んでも教えてやる気は無い。
「── これがいい」
ある記事が目に付いて呟きを洩らす。
そのまま、携帯端末を駆使して目当ての品物を注文すると端末を閉じた。セフィロスへのホワイトディの贈り物はこれで良い。セフィロスに直接希望の品を聞いてから、ジェネシスは真剣に悩むのが馬鹿馬鹿しくなり、適当な物を選ぶ事にした。大体あの本の価値に見合う物を── と、考えたのがそもそもの間違いだったのだ。
そして、当日── 。
身支度をして、髪を梳き、ピアスを付け変える。用意したプレゼントを抱えると思いの外重たくて眉をひそめた。一つ上の階に持って行くだけの事が途端に億劫になる。
約束はしていない。
居なかったら、これみよがしに奴の部屋のドアの前に放置して来るつもりだ。盗まれたって構わない。
ノックをして、暫しの間待つと、残念な事に在室だったらしくドアが開かれる。
現れた英雄に押し付ける様にプレゼントを渡すと、勝手に室内に入って行く。
「これは、なんなんだ? ジェネシス」
明らかに自分の希望の品と違う物を渡されて、怪訝な顔を見せる。
「お前の愛用のシャンプーとリンスの詰め合わせだ。毎回一本使い切るんだろう? アンジールが聞いたら泣くぞ!?」
「社の支給品なんか貰っても嬉しくない……」
「良かったな。俺も痛くも痒くもない」
愚痴を零してもばっさり切り捨てられて、途方に暮れる。とりあえず、重たいのでプレゼントはテーブルの上に置いた。
落ち込むセフィロスから見えない角度でジェネシスは、くすりと笑みを零す。
「── ああ、もうひとつ……」
突如くるりと身を翻し、セフィロスの首にしなやかに片腕を回すとふわりと左の頬に唇を寄せてやった。にこやかにセフィロスの顔を見つめてやると、右の頬を指し示してきたのでそちらにもキスをくれてやる。
英雄は、ジェネシスの耳元で揺れるピアスが何時もと違う事にようやく気が付いて、確かめる様にピアスをそっと手に取る。それは、何とも可愛らしい造形で……。
「── リボン……か?」
「気が付くのが、遅い」
揶揄う様に小さく呟くと最後に、唇にキスをした。
甘くゆったりとした口付けを終えると艶然たる笑みを湛えて、問うた。
「これで……満足、か?」
「── いや……まだ、だ……」
セフィロスは、穏やかな笑顔とは裏腹に情熱的な激しさをもってジェネシスの腕を掴むと強引に引き寄せた。
end
2008/3/10