お前は知らない
お前は知らない。
俺がこんなにお前の事ばかり考えているなんて……。
ジェネシスは、黒い携帯端末を取り出しカレンダーを確認する。セフィロスが戻る予定の日はまだまだ先で、無意識に溜め息が零れる。
「携帯の使えない地域なのか?」
幼馴染みが問う。
「そんな田舎じゃない。使えるんじゃないのか?」
「じゃあ、メールでも……」
「アイツのメールアドレスなんか知らない」
ジェネシスは、あっさりと事も無げに言う。
「── お前達、本当に付き合っているのか?」
思わず呆れた声を出す。セフィロスのメールアドレスなんて、アンジールだって知っている。多分、教えてやると言っても聞かないだろうが。
前から、この二人の関係のドライさは何となく察してはいたが、ここまでとは思わなかった。
「そういう事を言うのは、やめてくれ。俺だって、時々疑いたくなるんだ……」
ジェネシスは、テーブルに突っ伏し頭を抱えた。
『恋人』だと、言ってくれた事はある。
好きだの、愛してるだの囁いて、口説かれた覚えは一度も無いが。
セフィロスが言わないのに、こちらから言うのも釈然としないから、自分から言った事も一度も無い。
こんなんで良く続いてると、我ながら感心する。
恐らく、たまにしか逢えない事がお互いにとって丁度良い適度な距離を作り出しているのだろう。
自分も過剰に馴れ合う様な関係は嫌いだ。今のままで良い。
だけど、それでも、ふと淋しくなる時がある。不安に襲われる時がある。
◇◆◇
セフィロスは、黒い携帯端末を見つめて溜め息を吐く。任務は、まだ少し掛りそうだ。
メールボックスを開いて、来る筈の無い恋人からのメールを確認する。メールアドレスは教えてないが、万が一にも幼馴染みから聞いて送ってくれるのではないかという、儚い希望は今日も潰えた。
しかし、所詮メールはメールだ。ただの文字の羅列に過ぎない。電話番号も当然知らない。が、必要ない。声だけ聞いたって満足出来ない。
メールでも電話でもない。
必要なのは、ジェネシス本人だけ。
お前は知らない。
俺がお前にこんなにも、恋焦がれているなんて。こんなにも、お前自身を欲しているなんて。
セフィロスは携帯端末を閉じると、一日でも早く任務を終わらせるべく、長い銀の髪を靡かせ足早に次の目的地に向かった。
end
2008/5/4