お前を探して

資料室で調べたい事があって、暫く籠っていた。資料室には情報端末は持ち込めない。だから、携帯端末は持っていなかった。
「ジェネシス、此処にいたのか?」
不意に声を掛けられて、目を上げるとセフィロスだった。
「どうした?」
至って平静を装って答える。
「お前を探してたんだ」
今更だけど、それでもこんな一言でジェネシスの胸は動悸を覚える。何と答えてやろうか、思案しながら読み掛けの資料を置いて立ち上がり掛けて──
「ラザードが探していたぞ。早く指令室に行ってこい」
セフィロスは、それだけを告げると自分の役目は果たしたとばかりにさっさと立ち去って行った。

言われた通り、ソルジャー指令室に行き新たな任務を言い渡されると、準備の為に自室に戻った。出発は明日の朝だから、休息も取っておかないといけない。
直ぐに準備に取り掛かる気にはなれず、ジェネシスはひとまずソファに横になった。思わず、溜め息が洩れる。
── 一体、何日振りの再会だったと思っているのだろう?
ジェネシスは、未だにセフィロスの気持ちを掴み兼ねる事が多々あった。向こうから逢いたがってくれる事もたまにはあるが、今日みたいな態度を取られると流石に堪える。
── 本当に、アイツは俺の事をどう思っているんだろう……?
沈んだ気持ちのまま、それでもどうにか明日の準備を済ませ、ベッドに入る。
本当は、僅かな時間でもセフィロスに会いに行きたかった。でも、彼の昼間の態度を思い起こすと会いに行けなかった。

◇◆◇

翌朝、神羅ビルの屋上でジェネシスは唖然とした。
ヘリポートで待っていたのはラザードだけではなく、黒い革のコートに長い銀の髪を風に靡かせて、悠然とセフィロスが立っていた。
「まさか、コイツと二人なのか!?」
セフィロスを指差しながら、ラザードにつっかかる。てっきり、一人での任務だと思っていたのだ。
「あれ? ジェネシスには説明してなかったかな……。1st二人で行く程の任務ではないんだが、2ndや3rdの方が今ちょっと人手が足りなくてね」
ラザードの説明を聞きながら、ジェネシスはセフィロスを見つめる。
「お前は、知ってたんだな」
「当然だ──
だからこそ、わざわざセフィロスがジェネシスを探して呼びに行ったのだ。だからこそ、昨日のあの態度だったのだ。
── すまないね。てっきり、セフィロスが説明してるかと思ってたよ」
それはそう思うだろう。ラザードに非はない。
「任務の同行者ぐらい、ちゃんと把握しておけ」
口角を上げ揶揄するように言われるが、ジェネシスは今それどころではなかった。昨日のあの素っ気ない態度の理由が判明して、怒りや不平よりも嬉しさが先立つ。
── ああ……本当に、コイツはどうしてくれよう?
「どうしよう……。キス、したい──
セフィロスを見つめながら、思わず呟く。自分でも目茶苦茶な事を言っているのは解る。だが、セフィロスは躊躇いなくジェネシスの傍に寄り、優雅な手付きでジェネシスの顎に手を添えると、迷わず口付けた。
「セフィ……ロス……」
まさか本当にキスされるとは思わず、ジェネシスは窺うようにラザードの方にちらりと目線を送る。
「ああ、気にするな。ラザードなら、とっくに俺達の関係に気付いてるさ──
セフィロスは、ジェネシスを軽く抱き寄せ、堂々とラザードの方を見遣った。
「ああ……うん、それは……ね。一応……」
ラザードは、曖昧に答えると、慌てて1st二人の出立を促した。

二人を乗せたヘリが小さくなっていくのを呆然と見送るラザードは、勿論二人の関係など全く気が付いていなかったのだが──

end
2008/5/29