ドライビング

「デートがしたい」
そんな突拍子もない事を、セフィロスが言い出したのはいつの日の事だったか。当然、嫌だと即答した。大体、なんでそんな事がしたいのか?
「世間一般の恋人同士というものは、デートと云うものをするらしいと聞いたのだが?」
「俺達を、世間一般の恋人同士と一緒にするな。お前と付き合ってるという事を、触れ回るような真似はしたくない」
そこで、話は終わった筈だった。ジェネシスの頭の中からは、とっくにその議題は削除されていた。

── そして、今。
セフィロスは、車の鍵を見せ付けるようにジェネシスの目前にかざす。
「ドライブなら、人目に付かないだろう? 車を借りてきた」
ジェネシスは、思わず俯いて諦めを含んだ溜め息を洩らす。
「運転は、お前がしてくれるんだろうな?」

駐車場に行くと、あからさまに社用車といった感じの黒いセダンの停めてある場所へ連れて来られた。
「……会社から借りたのか?」
「他にどこから借りるんだ?」
真剣な面持ちで答えるセフィロスに、ジェネシスは再び溜め息をひとつ吐くと、今度世の中にはレンタカーという物がある事を教えてやろうと決意する。
まだ軍用車じゃないだけマシかと思い直し、諦めて助手席に座った。
「で、何処に連れて行ってくれるんだ?」
気怠そうに助手席へと身体を預けたジェネシスは、当然の疑問を投げ掛ける。幾らドライブとは言っても、人目に付かないように……となると、賑やかな場所に行く訳にはいかない。
セフィロスもそれは分かっているのだろう。車は郊外に向かっているようだった。

ミッドガル郊外──
それは、機械仕掛けのミッドガル中心部と180度違い、何処までも荒野が続く寂寥たる世界であった。デートの場所としては、明らかにミスチョイスと言える。が、当然ながら、かの英雄は全く意に介した様子はない。
同じ様な景色が延々と続き、一応我慢して付き合ってやっていたジェネシスも、とうとう堪り兼ね愚痴を零した。
「……ツマラナイ」
セフィロスは、荒野から道を少し外れ、荒野を見渡せる様な小高い崖の上に車を停止させる。
訝しげにセフィロスの横顔を見上げるジェネシスに、セフィロスは急に向き直り、不意打ちのキスを仕掛けた。
「なっ……!」
「刺激が欲しいんだろう?」
セフィロスは、余裕たっぷりの表情で口端を上げる。
そうして、再び、仕掛けられるキス。今度は、舌を絡めとり吸い上げる様な濃厚なキスだった。
── っ! ぅ……ふ」
ジェネシスの手は無意識にセフィロスの頬に添えられ、途中で息継ぎを繰り返し、合わせを変えながらより深い口付けを誘う。だが、より深い口付けを求めれば求める程に、車のシートやらハンドルやらサイドブレーキやらに阻まれ、上手く身動きが取れない。身体が車中のあちらこちらにぶつかる。
「…………狭い」
鬱陶しそうな不機嫌な声が上がる。
ジェネシスはもうそれ以上の行為は諦めた様に、セフィロスから身を離す。正直、すっかりドライブに飽きていたジェネシスには、もうこんな事はとっとと切り上げて帰りたい、というのが本音だった。
すると、突然セフィロスがドアを開け車外に出た。いくら見晴らしが良いとは言え、所詮面白味も何もない荒野が広がるばかりの風景だ。わざわざ車外に出てまで満喫したい景色でもない。
ジェネシスは、不審顔で髪を掻き上げつつ、セフィロスの動向を目で追う。と、セフィロスは車の周りを半周して助手席側に回ると、ドアを開けた。
「何だ? 俺は降りないぞ。別に見るところなんかないだろう?」
ジェネシスの言葉が聞こえていないのか、聞こえていて敢えて無視しているのか。セフィロスは唐突にジェネシスの腕を掴み、強引に車外に引っ張り出した。
「セフィロ……!」
車体に背中を無理矢理押し付けられて、口付けを強要される。セフィロスの腕が、より深い口付けを促す様に、ジェネシスの髪を梳きながら後頭部を引き寄せる。
── んン……」
反射的にセフィロスの首に両腕を廻し、甘ったるい声を上げ更なる口付けを強請ってしまう自分はもうセフィロスから逃れられないのかも知れない。
「セフィ……ロ……ス」
縋りつく様に、しがみつく様に、セフィロスのコートを握りしめる。が、セフィロスは更なる強引さを持って、縋りつくジェネシスを振り払うかの様に身体の向きを反転させ、ジェネシスの上半身を車のボンネットの上に押し付けた。
「な……!」
驚きの声を上げるジェネシスに構わず、セフィロスの手はジェネシスの下半身をまさぐり、複雑なベルトのバックルを巧みに外し、そのまま下着ごとボトムを脱がし始める。
「や……やだ、セフィロス! やめろ!」
慌てて暴れても、既に背後から押さえつけられている現状では碌な抵抗は望めなかった。
解放されていく下半身。秘部に迫る長くしなやかな指。一方的に行われる陵辱に、ジェネシスはボンネットにしがみつきながら耐えるしかなかった。
秘部の周辺を探る様に行き来していた英雄の指は、遂には核心に迫る様にジェネシスの裡にゆっくりと侵入してくる。裡で蠢くセフィロスの指が内部のある一点を掠めた時、ジェネシスの身体がびくりと顕著な反応を示す。
その反応にセフィロスは満足気に口端を上げて、更に同じ場所を執拗に責める。時にはゆっくり、時には激しく適度に緩急をつけ巧みに責め上げてくるセフィロスの手管にジェネシスは到頭屈服して小さく呻き声を漏らしながら精を吐き出してしまった。
セフィロスは自らのボトムの前を寛げると、ジェネシスの腰を抑え付けるように手を掛ける。
力の抜けた身体を必死に両手で支えつつ、肩で息をするジェネシスに最早抵抗するだけの気力はなく、あっさりとセフィロスの侵入を許してしまった。されるがままの屈辱と抗いがたい快楽とに苛まれ、結局ジェネシスは理性を手放した。いっそ、その方が楽になれる。
一度精を吐き出した身体は、驚く程に敏感だ。と、同時に一度吐き出した手前そう簡単には達しない。深く長い快楽の渦がジェネシスを翻弄した。

セフィロスも精を吐き出したところでようやく解放されたジェネシスは、服が砂まみれになるのも構わずその場にへたり込んだ。構わなかったと言うよりは、構う余裕も無かったのだが。
「くそっ! もう、二度とデートになんか付き合ってやらないからな」
車体に寄り掛り何とか体勢を保ちながら、ジェネシスは悪態と共にセフィロスを睨め付ける。
と、セフィロスはジェネシスから見て腹立たしいほど優雅に近付くと、ジェネシスのすぐそばに腰を落として顔を覗き込む。
「良くなかったか?」
「い……良いとか、悪いとか、そういう問題じゃないだろう!?」
ジェネシスは、表情を隠す様に顔を背け俯く。
── 良かったんだろう?」
セフィロスは口角を上げて決めつける様な口調で言うと、顔を伏せるジェネシスの顎に手をかけ無理矢理上向かせてから強引に口付けた。
結局のところそれ以上は逆らえず、それどころか縋る様に口付けに応えてしまう自分に、ジェネシスは、自分の身体の中枢に、心の奥底に、どれ程この男が刻み込まれているのかという事を、悔しい程に思い知らされる。

それは、果てしない絶望。
言いしれぬ歓喜。

── もう、逃れられない。

end
2008/9/6