新年の願い

変わらない夢。
変わらない憧れ。
変わらない希望。

変わらない明日を繰り返す日々。

何も変わらないでいたつもりだったのに、今、憧れだった彼の人は、俺の隣で寝息を立てている。

近付きたいと思って、追い掛けて……そして、近付き過ぎてしまったのかも知れない。
取るべき距離が測れない。
でも、離れたくない。

近くに居られる事が嬉しい。
近くに居られる事が苦しい。

何時までも追い掛けていたい。
何時か追い越してやりたい。
何時までも、届かない人でいて欲しい。
何時までも、敵わない人でいて欲しい。

眠る英雄の額に、そっと唇を寄せる。

新年の朝は、まるで隔離されたかのように冷たく静かだ。
少しずつ白んでいく空。
研ぎ澄まされた静寂。
眩くおごかな日の出。
美しい輝きに辺りは満ちていく。

二人きりの世界。
二人きりの時間。
二人きりの── 永遠。

このままでいたい。
何時までも、二人で変わらずに……。
変革を望みたい。
更なる深淵に、共に身を堕としたい。

二律背反する思考。
変わらないのは、共に在りたいという事。

「起きていたのか?」
突如、破られる静寂。
突如、遮られる思考。
起き抜けで、普段よりも一層低い声が愛おしい。口許に自然笑みが零れる。
「随分と機嫌が良さそうだな」
「そうか?」
ジェネシスは、朝は大概不機嫌である事が多い。
「何を……していた?」
「初日の出に、願掛けをちょっと……な」

願い事は、ひとつだけ。

end
2008/12/29