フロック
叶えたい夢がある。
叶えたいけど、簡単には叶えたくない夢。
自室にて、実家から送られてきたバカリンゴをひと囓りする。
口中に広がる懐かしい酸味と甘味。
故郷の味を束の間に楽しんでから、手早く身支度を済ませる。
もっとゆっくり味わいたいのは山々だが、急遽入った任務が待っているのだ。
51階のソルジャー指令室に到着すると、先にセフィロスが来て待っていた。
長い銀の髪をふわりと揺らして、こちらを振り返る。
「もうすぐラザードが来る。最終打ち合わせが済んだら、すぐ出るぞ?」
「……了解した」
およそ恋人同士が久しぶりに交わす会話としてはふさわしくない、あまりに素っ気ない簡潔な会話。
だが、これが自分達らしいのだと思う。
何時でも何処でも、長く会えない日々が続いたとしても常に変わらぬ恋人の態度に、却って愛しさを感じてジェネシスはそっと身を寄せる。
ラザードが来る迄の僅かな時間、これくらいは許されるだろう。
そう思って瞳を閉じていると、不意に肩を抱き寄せられた。驚いて顔を上げ、恋人の顔を見詰めると、その端正な顔が近付いてきて唇を塞ぐ。
「ん……っ」
任務の前だからと自制していたのに、実際にゆるく味わうように舌を絡め取られると甘やかな声が洩れる。
無意識にセフィロスの首許に腕を廻して、更に深く、更に長く、と強請ってしまう。
「甘い……な」
僅かに唇が離れた隙に紡がれる低い囁き。
「少し酸味があって、イイ味、だ」
言われて、寸前に口にしたバノーラ・ホワイトが頭を過ぎる。どうやら、不覚にも味見をさせてしまったようだ。
慌てて、セフィロスの身体を押しやって突き放したところで、ラザードが現れた。
最終打ち合わせが終わりヘリポートへ移動すると、それぞれの配置に付く為に別々のヘリに乗り込む。その直前。
「さっきのは、食べさせた訳じゃないからな! ノーカンだ」
ジェネシスに突如、黒いコートの前立てを掴まれて一方的に捲し立てられたが、勿論セフィロスには何の事だかサッパリ分からなかった。
end
2009/4/26