秋風

乾いた風の音がする。
もう秋も深い。
地面に敷き詰められた落ち葉達がかさかさと蠢く。
きっと、外界は冷えた空気に支配されているのだろう。ミッドガルとは違い自然がある場所だと室内に居ても外の空気や気温がなんとなく感じられる。
神羅ビルから離れての久々の逢瀬。ジェネシスは、暖かい室内から他人事のように道行く人々を眺めていた。
「何を見ている?」
セフィロスが背後から覆い被さるようにジェネシスを包んで、一緒に窓の外を見る。セフィロスの熱気を纏った身体に覆われ、更なる温もりがより外界との距離を広げる。ジェネシス自身の身体も事後の為、通常よりも高い熱を帯びている。
「少し、外を歩いてみないか?」
徐に振り返って軽く首を傾げてみせた。艶めいた唇は僅かに笑みを形作っている。
ジェネシスにとっては、過度の熱気を冷ましたいが故の何気ない発言だった。だが、常より共に出歩く事を好まないジェネシスからの思いがけない誘いに、英雄は素直に受け取って良いものか束の間躊躇した。
恐らくはミッドガルから離れた場所であるから故の油断がジェネシスにはあるのだろう。だが、例え此処がどこであろうとも、英雄セフィロスは目立つし認知度も当然高い。少し冷静になって考えれば気軽にデートの誘いなどは出来ない。
ジェネシスのことだから、あとで冷静になった途端に愚痴を零し、不当にセフィロスを悪者にする可能性さえある。この誘いに乗るべきか、断るべきか。
しかし、以下の結論に達するのも速かった。
── この機会を逃したら、次はもう二度とないかも知れない
気粉れな恋人の気粉れな思い付きを取り逃さないよう慎重に。もし、下手に焦ったり慌てたり動揺してみせたりしたら、たちまち前言を撤回されかねない。
セフィロスは極力平静を装って、ジェネシスの手を取り自らの口許に近付けると、了承の意を込めてうやうやしく口付けた。

end
2009/9/23