恋人と共に穏やかな一日を過ごして、夜は同じベッドに入る。
こうして、ただ睡眠を得るために寝床を共にして一緒に寝入るのは酷く落ちつく。セフィロスは安らかな気持ちで深い深い眠りへと落ちていった。

夢を見た。
夢の中で、セフィロスはセフィロスではなかった。
誰とも分からない一人の少年。平凡な、どこにでもいそうな少年。
学校が終わって、放課後友人達と一緒に遊び回る。グラウンドでサッカーをしたり、五番街のマーケットに寄って好奇心で変な物を買ったり、色が付いたお菓子を食べたり。帰りの電車の中では、友人達とくだらない話で盛り上がった。
ごくごく平凡な日常。
セフィロスには決して経験しようもない。
やがて、家に帰り着くと其処は暖かい光に包まれ。お帰りと云って出迎えてくれる父親と晩御飯にしましょうと云って微笑む母親の姿。焼きたてのパンの香りと、湯気が立つスープ。食卓に並ぶ美味しそうな夕餉ゆうげ

もし、自分が神羅の英雄ではなかったら、ソルジャーではなかったら、特別な能力を持たずに生まれてきたのなら、そんな平凡な幸せと出合えたのだろうか。
ふと、目を覚ますと未だ夢の余韻が残って、そんな思考を巡らせる。
何故こんな、セフィロスには縁もゆかりもないような夢を見てしまったのだろう。もしかして、自分は無意識の果てに平凡な人生を求めていたのだろうか。普通の只人として生きる、そんな人生を。
「ぅん……」と声を洩らして、少し身じろぎしてから隣の恋人が目を覚ます。
もう少し寝顔を見ていたかったのに、こういうところはなかなか隙を見せてくれない。
ゆっくりと目を開けたジェネシスは、セフィロスが既に起きている事に気が付くと「おはよう」と云って柔らかく笑んだ。その優しい声音にはっとして、セフィロスは反射的にジェネシスを抱き締めていた。
「どうしたんだ? セフィロス……苦しい」
夢の中にジェネシスの姿はなかった。当たり前だ。ジェネシスに出逢えたのは、セフィロスがソルジャーだったから、神羅の英雄だったから。平々凡々な一市民であれば会う術もなく。こうして腕の中に収める事も出来なかった。
セフィロスが望んだ幸せはごくごく平凡なものだったのかも知れない。
だが、いま一番必要としている幸せが腕の中にあった。

end
2013/02/10