特別なクリスマス
もうすぐクリスマス。
毎年恒例の白いクリスマスツリーは今年も綺麗に飾り付けられ、八番街を華やかに彩っている。街並みもどこか浮かれた雰囲気に包まれ、賑やかで晴れ晴れしい。
久しぶりに街中へと買い物に出掛けたジェネシスは、楽しげな街並みを眺めながら釣られて浮き立った。何より今年は折好くクリスマスと長期休暇の時期が重なり、セフィロスと共に過ごせることが確定していたのだ。いつもと違って余裕があるため、プレゼントもじっくりと吟味することが出来る。
赤と緑のクリスマスカラーに染まった街を歩きながら、プレゼントを物色する。セフィロスは何を贈っても、同程度のリアクションしか返ってこないので、なかなかコレといった物が思い浮かばなかったが、あれにしようか、これにしようかと悩む過程もまた楽しいものだ。
何かセフィロスに似合いそうな洒落た物にしようか、いや実用的な物の方が良いだろうか。こればかりは自分のセンスを押し付ける訳にもいかないので、余計に悩んでしまう。
だって、折角のクリスマスなのだ。しかも、二人でゆっくり過ごせる特別なクリスマス。だから、プレゼントも特別な物をどうしても用意したかった。
こうして時間に余裕がある時でなくては叶わないような、取っておきのプレゼントを── 。
そうして迎えたクリスマス当日。
セフィロスは指定された時間にジェネシスの私室へと向かった。「今年は俺の部屋で過ごしたいんだが……良いか?」そうジェネシスに問われた時は多少驚いた。彼は、普段からセフィロスを私室に入れたがらなかったからだ。だから、部屋デートにはもっぱらセフィロスの自室を利用していた。
恋人に対しても、いささかガードの固いジェネシスが自室へ誘ってくれるということ自体、セフィロスにはちょっとしたサプライズだった。過剰な期待は禁物とは分かっていたが、期待せずにはいられない。そうして期待に胸を躍らせながらも、ジェネシスの部屋のドアをノックする。一応、ドアが開かれるのを待っていたのだが一向に開かれることは無く。代わりに中からジェネシスの声が返ってきた。
「セフィロス、ちょうど良かった。中に入ってきて手伝ってくれ!」
言われるがままに室内に立ち入るとリビングの奥の方にジェネシスは居た。彼の隣には彼の背丈よりほんの少し低いぐらいの、そこそこ高さがあるクリスマスツリー。その下には、たくさんのオーナメントやプレゼントが並んでいる。
「わざわざツリーを用意したのか?」
今まで家庭用のツリーなど見たことがなかったセフィロスは、やや驚いたようだ。ジェネシスはツリーの隣に立ち、熱心に飾り付けをしている。
「ああ、セフィロス。一緒に飾り付けをしよう」
恋人の嬉しそうな笑顔に否を唱えられる筈もなく。セフィロスは床に散らばるオーナメントを手に取り飾り付けを手伝った。ツリーの下に置かれたプレゼントの数々にセフィロスは疑問を呈する。
「何故、こんなにプレゼントが用意してあるんだ?」
「クリスマス当日まで、こうしてツリーの下にプレゼントを置いておくのが一般的な慣習なんだ。皆が誰か宛てのプレゼントを毎日置いていくから、当日にはプレゼントの山が出来る」
ジェネシスは手際良くオーナメントを取り付けながら、説明する。ツリー周辺に積まれているのは勿論セフィロスへのプレゼントだ。一通り飾り付けが終わると、改めてセフィロスの方を向き直る。
「セフィロス、お前は以前クリスマスは大事な人と過ごす日だと云っていたな」
「ああ」
「だから、俺はちゃんとしたクリスマスをお前と過ごしたいと……そう思ったんだ」
八番街のものとは比べ物にならないが、そこそこ立派なツリーを用意して、一緒にオーナメントを飾り付け、当日までに用意されたプレゼントを期待を込めて開封する。
恐らくセフィロスがかつて経験したことが無いであろう、極々普通の平凡なクリスマス。それが、ジェネシスが考えたセフィロスへのクリスマスプレゼントだった。
大事な人と過ごす特別な日。
だからこそ、初めてのことをセフィロスと一緒にしたかった。平凡でありふれたクリスマス。だが、幼少の頃からセフィロスには無縁だったもの。これが英雄にとって大事な思い出のひとつとなってくれれば嬉しい。
「実はアンジールが用意してくれたチキンもあるんだ。あとで一緒にワインでも飲みながら食べよう」
そう云いながら、ジェネシスはセフィロスに近付くと踵を上げ、愛おしそうに大事な人の頬にキスを贈った。
end
2013/12/21