冬への想い
バノーラ村は貧しい村ではあったが、比較的温暖な土地であった。その温暖な気候故に名産のバノーラ・ホワイトは季節などに関係なく年中美味しい果実を実らせるのかも知れない。
そんな暖かな故郷で生まれ育ったジェネシスには多少寒さに弱いところがあった。ミッションではアイシクルロッジのような極寒の地に赴くことも当然あるのだが、出来れば極力避けたい任地である。
そんな彼がソルジャー・クラス1stに昇進して数年が経った現在。未だに寒い場所は苦手であったが、冬は嫌いではない。寧ろ、うだるような暑さの夏よりは遥かにマシだ。いつしか冬は好きな季節のひとつとなった。
冬を好きになったのは、恐らくセフィロスの所為だ。
セフィロスは逆に異様に寒さに強いのか、夏だろうが冬だろうが、常にコートの下はサスペンダーのみで上半身は裸である。任地が極寒の地だろうと関係ない。いつもと変わらぬお馴染みの格好。加えて、彼の銀と黒で構成された外見には雪がよく似合った。雪が降りしきる中、佇む彼を眺めているだけでも溜め息が零れるほどに。
今夜も彼は全身雪にまみれて帰ってきた。長い銀糸に融けた雪が水分となって伝い、毛先に無数の水玉を作るのさえ美しい。
冬特有の凍り付いた空気。銀の雪。寒さによりいっそう蒸気の湯気が際立つ街並み。全てが英雄の美しさを際立たせる為の演出とさえ思えた。
「おかえり、セフィロス」
そう云って、雪で濡れたセフィロスの身体をタオルで拭ってやるジェネシスはいつになく甲斐甲斐しい。どういった理由かは分からないが、ジェネシスは冬の方がセフィロスに気遣い優しくしてくれる。
以前は春だの秋だのといった季節には一切無頓着だったセフィロスが、最近冬が好きだと感じている原因はジェネシスなのかも知れない。
セフィロスはタオルを持って髪や頬、コート等を拭い続けるジェネシスの腕を唐突に掴むと黙って引き寄せ、お互い濡れてしまうのも構わずにキスをした。
冷え切った身体に染み込むような熱い熱いキス。
冬の方が、寒さが厳しいぶん自然と距離が近くなる。触れ合うだけのキスですら充分に熱くて、抱き合って互いの体温を確かめ合う行為さえ身体の芯から蕩けそうになる。
やはり、俺は冬が好きだと二人は同時に思った。
end
2014/1/18